結婚から始めましょう。
事務所から徒歩5分の所に、私の小さなお城はある。1DKのこのマンションは、せめてセキュリティだけはしっかりしてないとだめだという華子の言葉に従って選んだ部屋だ。

華子自身は、事務所からうちとは反対方面へ徒歩5分ほどの所に住んでいる。
貴志が亡くなった今、一緒に住もうと何回か誘われたけど、プライベートの時間も大切にしたいからと、今のところ断っている。

「ただいま」

返事はないとわかっていても、ついつい言ってしまう。事務所もアットホームで好きだけど、やっぱり自宅に帰ってくるとホッとする。

家事をしてようやく湯船につかった時には、思わず大きく息を吐き出していた。

「はあ、疲れた」


仕事は好きだ。
華子の役に立ててることを実感するし、良い人ばかりに囲まれているから。

ただ、アドバイザーとして仕事をするのは少々気が重い。
人の一生を左右することになると思うと、生半可な気持ちで向かうわけにはいかず、肩に力が入ってしまう。いつも不安がつきまとう。

特に純也のような過去のある人は尚更だ。






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