結婚から始めましょう。
しかし……
ベリーヒルズビレッジのオフィスビルなんて、こんなことでもなければ足を踏み入れることはなかった。

そもそもこうなったのは、貴志と秋葉グループの現会長である秋葉幸太郎が、長年友人関係だったことに起因する。

2人は仕事を通して知り合い、かなり親しい間柄だったようだ。もちろん、配偶者である華子も幸太郎と面識がある。詳しいことはわからないけれど、今回の南田の依頼はその伝手を辿って巡ってきた話だった。


本当の目的を知れば純也が来るはずないとわかっていたため、騙し打ちのようになってしまうけれど、仕事絡みの話だと言ってあの場に呼び出したのだ。
全て南田の発案だ。どんな結果になってもクレームはつけないからと頼み込まれて、華子も渋々受けたらしい。けれど、実際に担当する私としてはたまったものではない。父親である南田の同席がなかったら、絶対に拒否していた。


今日は緊張のあまり、約束よりかなり早く到着して様子を伺っていた。なんとなく入り辛くて、入口付近を行ったり来たりする姿は、かなり不審に見えただろう。
幸い、通りかかる人は皆一様に早足で、他人に無関心。職務質問のように呼び止められることはなかったけど。

「なんとか受け入れてもらえてよかった」

帰り際の純也の穏やかな表情を思い出して、改めてホッとした。それから、そんな純也を見て安心した南田の表情も。

「うまくいくといいなあ」

純也には数日後、未来アートの店舗へ来てもらう約束を取り付けてある。そこで細かい条件を突き詰めていき、それを元にお相手候補を探していくことになる。





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