結婚から始めましょう。
「桃香」

優しく呼ばれて、彼を見つめた。

「僕と結婚したばかりに、こんなに苦しい思いをさせてしまって、本当に申し訳なかった。守るって約束したのに」

「そ、そんな、蓮さんのせいなんかじゃ……」

「違う。これは僕の……秋葉のせいなんだ」

そう言ったきり、蓮は俯いて握っている手にぐっと力を込めた。
そして、何か覚悟を決めるかのように顔を起こすと、私をじっと見つめた。


「本当なら、こんな家から桃香を解放してあげるべきだとも考えた」

「えっ……」

「桃香を自由にしてあげるべきなんだ」

自由にって……

「でも、どうしたってできそうにないんだ。桃香を手放すぐらいなら、僕が秋葉を離れる。もとから秋葉の家に未練があるわけでもない。だから……これからも僕と一緒にいて欲しい」

「蓮さん、どうしてそんなことを言うの?」

下を向いてしまった蓮に、必死で訴えかける。

「私は蓮さんと恋がしたくて結婚したの。蓮さんのことが心の底から好きだから。蓮さんが隣にいてくれるだけでいいの。蓮さんが秋葉家の人間であろうがなかろうが、そんなこと、関係ないんだよ」

支離滅裂になりながら、それでも伝えたくて続けた。

「グループに関心がなかった陽子さんが、傘下の会社を立ち上げたのも、お父様の姓にしなかったのも、やっぱりつながりを大切にしたからじゃないの?」

伝わって欲しい、私の想いも、陽子達の想いも。
ほんの数ヶ月の付き合いの中でも、彼女が決して幸太郎との繋がりを切りたがったわけではないことは感じていた。

「だから、そんなこと言わないで。秋葉を離れる必要なんてない。本心じゃないことはしないで。蓮さんの本当にやりたいことをしてよ。何があっても、私が蓮さんを支えるから。お願いだから、そんなふうに言わないで」

「桃香……」

涙を流して喚くように訴える私を、蓮がぎゅっと抱きしめた。



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