結婚から始めましょう。
オーダーを済ませると、秋葉は改めて私へ向き直った。

心の中で、〝これは仕事の面談と同じだ。仕事、仕事……〟と、必死で自分に言い聞かせて、なんとか平常心を取り戻そうと試みる。

「改めまして、カサブランカの社長をしております、秋葉蓮と申します」

最後に感じの良い笑みを向けられてドキリとする。

「み、未来アートの高橋桃香です」

「突然の話で驚かせましたか?」

「は、はい。それは……」

「でも、こうして会ってもらえてよかった」

そう言って一層笑みを深めるから、その容姿の良さもあって、見ているこちらは頬に熱が集まってくる。真っ直ぐに見つめてくる彼に対して、俯きがちになってしまうことは許して欲しい。

「あ、あの。どうして私を?」

「華子さんにはお話ししましたが、先日、会社で桃香さんを見かけたんです」

南田親子と対面した時のことだろう。今更ながら、あんな場所で面談なんてしてよかったのかと不安になってきた。

「す、すみません。あの場で面談なんて……」

「ああ、それはいいです。時間外でしたし、事前に南田から秘書に連絡が入っていたので。そもそも、あそこはフリースペースですからね」

「そ、そうですか」

よかった……
怒られることはなさそうだ。



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