結婚から始めましょう。
すっきりしない気持ちを抱えたまま帰宅して、蓮と夕食を共にしていた。

「桃香、会長から打診があったんだけど」

「うん?」

「まだ少し先の話だけど、今度グループの別会社の代表取締役の就任を打診されてる」

蓮が仕事のことを話すのは珍しい。何か私にも関係があるのだろうか?

「カサブランカは母さんが立ち上げた会社で、それを守れる立場にいられることは嬉しことなんだ。ただ、会長としてはその経験を生かして更に上の仕事をさせたいらしくてね」

「うん」

「要するに、昇進するってことなんだけど、それを受けると、今より忙しくなりそうなんだ。僕としては、桃香との時間をちゃんと確保したいんだけど、これまでと同じようにとはいかないかもしれない」

それは寂しい気もするけれど……
でも夫の昇進を喜ばないのは、妻としてどうなんだろう……

「えっと……本音は一緒の時間が減るのは寂しい。でも、この話は幸太郎さんが蓮さんに期待したからこその話でしょ?だとしたら、あとは蓮さん次第だと思う。私達は夫婦だから、一緒に過ごす時間が減っても、蓮さんはここへ帰ってくるんだし、私もここで待ってるよ」

「桃香……」

きっと、蓮は迷っているんだと思う。
幸太郎のことを心から慕う彼のこと。その期待に応えたい気持ちは大きいはずだ。
けれど、陽子の残したカサブランカを守り続けたいとも思っている気がする。










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