触らないでよ!〜彼氏に振られたその日、女の子(?)に告白されました〜
「よし、じゃあ次はお前から振れ」

「え」

「そしたらスッパリ諦めてやる」



そう言って笑う早坂が、痛々しそうだった。

でももう彼女としての気持ちがないから、言われた通りにしかできない。

慰められるのはきっと向こうも望んでいない。



「……早坂のことは好きだけど、同期としてというか友達としてとしか見れません。
だから、付き合えません」

「はい。ーー握手でもしとくか」

「なにそれ」



笑いながら、差し出された手。
握った方がいいんだろうか。
でも前みたいな嫌な気持ちになりそうで怖い。

この人は、友達でいい。同期のままでいい。

押し黙っていたら、所在なく浮かんでいた手が引っ込んだ。



「……どういう相手だったらいいんだろうな」

「え?」

「どういう相手だったら、お前、触っても嫌じゃないんだろうって」



澪ちゃんの顔が浮かぶ。




「もし好きな人とさ、付き合えるようになったら、次は半年待たせないようにしろよ。
付き合ってんのに触れないって、結構地獄だったぞ」

「……わかった」

「じゃあ、俺はひとり寂しくこれ観てから帰るわ」

「……うん」

「送ってやれなくてごめんな」

「ううん」



澪ちゃんと行った映画館の前で、早坂と別れた。

すれ違う人の視線を感じて、うつむきながら歩いた。

私が泣くのはきっと違う。

でも初めて経験した、一方的じゃないちゃんとした別れが悲しくて、涙が止まらなかった。


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