触らないでよ!〜彼氏に振られたその日、女の子(?)に告白されました〜
涙で腫れた目で電車に乗りたくなくて、ショッピングモールのトイレにこもる。

少し落ちついたところで、どうしようもなく澪ちゃんに会いたくなった。

この顔では会いに行けないから、パウダールームでメイクを直す。

目の充血だけはどうにもならないから、落ち着くまで、少しお店の中を見て回った。




澪ちゃんと前に歩いたことを思い出す。
2人ともピアスを開けてないのに、どんなものが似合うか勧めあったりした。


本屋にも寄った。
小説も漫画もあまり読まないと言われ、なにが好きなのか聞いたら海外の映画だと教えてくれた。
一人暮らしをしたら絶対買おうと決めていたスピーカーを最近やっと買えたと喜んでいた。


一度しか来ていないのに通る場所全部、澪ちゃんとの思い出がある。



付き合うきっかけは、たぶん酔った勢いだったんだと思う。

顔を真っ赤にしながら告白してくれた澪ちゃんを見て、お店で慰めてくれるときの手の温かさとか、目を細めて笑う顔とか、本気で心配してくれたときの泣きそうな顔とか、これが全部手に入ったらどんなにいいだろうと思った。


キスやセックスで得られないような、誰かに想われているという確信と安心感が欲しかった。

それは今まで付き合ってきた人達から見られないものだった。

後になって思えば、私がただ気づいてなかっただけかもしれないけど。

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