触らないでよ!〜彼氏に振られたその日、女の子(?)に告白されました〜
「俺送っていこうか? 澪こんなんだし」



智哉さんが澪の手首を持ってプラプラ振る。
澪ちゃんはうなだれたまま、寝室の入口で座り込んでいる。



「……いえ、大丈夫です」


ーー私より澪ちゃんは大丈夫なのか。



「澪ー、ミカさんは意外に大丈夫そうだぞー。
お前が死にそうになってどうすんだー」

「……うるさい、お前もう帰れ……」



たまに聞く寝起きのような低い声が澪ちゃんの口からこぼれる。



「だってさ、ミカさん俺帰っていいかな」



突然話をふられて驚く。
智哉さんのこの朝から高いテンションはなんなんだろう。

はしゃいでいるときの澪ちゃんと似てるけど、この空気に今のテンションはどうも合わない。



「逃げないで話聞いてやってね、聞いてから振るなり罵倒するなりしてね」



ポイ、と澪ちゃんの手を放り投げる。
バイバーイとかるく手を振られて見えなくなった。
澪ちゃんが勢いよく立ち上がってその後を追う。



「いって! なんで殴ってんだ澪!」



智哉さんの悲鳴が聞こえた。

< 171 / 259 >

この作品をシェア

pagetop