触らないでよ!〜彼氏に振られたその日、女の子(?)に告白されました〜
この辺の地理がわからないから、場所を指定してほしいというあゆちゃんに、SARASAや他の飲食店が並ぶ繁華街を教えてその駅前で待ち合わせしようと電話を切った。



スマホをテーブルに置いて、手に持っていたドレッシングに視線を移す。

ーー今日は持って帰れないな。








「おー、久しぶり! 去年の夏ぶりかな!」

「久しぶりー、あれ、あゆちゃん痩せた?」

「変わってないわー」



駅前で旧友との再会を喜ぶ。

2人とも大酒飲みなせいで、お店は自然と居酒屋になった。





「やー、ほんと久しぶりー」

「さっきも言ったよ、それ」



ビールジョッキを傾けて、水分補給でもするかのように一気にあおる。





この年齢プラス長年の付き合いとなると、出てくる話題はいつも決まっていた。



「うちら田舎じゃん? 田舎もんの25前後ってだいたい1人目産んでるからさ」

「周りから言われたりする?」

「うん、まぁ、今日なんて最悪だよ。
明日、いとこの結婚式なんだけど、私より年下なんだよね。

だからこう、さっきまで親がホテルで次はお前だなみたいな。
次はお前ってなんだよ、ホラーかよ」



あゆちゃんが頬を膨らましながらきゅうりの浅漬けを箸でいじる。



「でも高校の頃からずっと付き合ってる人いたよね。今も続いてるんでしょ?」

「まぁ、1回、2ヵ月くらい別れてたけどね」

「そういう話はしないの?」

「こっちからするのって結構勇気いらない? 付き合ったばかりのテンションならともかくさ、5年以上いると『今さら感』が出てくるっつーか」


まさに今、付き合ったばかりのテンションで同棲しようとしているから、恥ずかしくなってきた。

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