触らないでよ!〜彼氏に振られたその日、女の子(?)に告白されました〜
「……え、え!?」

「あはは、ミカさんめっちゃ驚いてる」




いたずらが成功した子どものように満足そうに澪ちゃんが笑う。

「知らなかったの?」と横からサラサさんの声が聞こえる。


知らない。だって、今日の朝までは長かった。






「ミカさん、帰ろっか」



聞き慣れたはずの低い声で、手を差し出される。







反射的に手を引っ込めてしまった。

そんな私を見ながら、ショックを受けるどころか楽しむように澪ちゃんが近づいてくる。

完全に男の人になった澪ちゃんを直視できない。





「ーーミカ」




耳元で呼び捨てにされて、ぶわっと体温が急激に跳ね上がる。

昨夜の記憶が、頭の中で反すうされる。





澪ちゃんの体温が高いこととか、声とか、息とか、なんかもう全部、思い出してしまう。


男だってちゃんと見て理解したはずなのに。
何度も見たから、慣れたはずなのに。



たった髪を切っただけで、こんなになるなんて。
裸を見たときのほうが、すごいはずなのに。









顔を真っ赤にして泣きそうになる私を見て、サラサさんがカウンターから飛び出してきた。



澪ちゃんはいたずらを仕掛ける子供のような目をして笑っている。





「……自分で歩くから、そこどいて……」



目を逸らしたまま伝える。




「無理ー♡」





スツールから降りる直前に抱きしめられて、身体中の血が沸点に達した。

澪ちゃんの匂いと体温で、力が抜ける。

サラサさんの短い悲鳴が聞こえた。




ーーそれから先は、覚えてない。
















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