エリート副社長とのお見合い事情~御曹司はかりそめ婚約者を甘く奪う~


「私、浅尾さんには色々と甘えすぎているので……恥ずかしいです」

両手でそれぞれ赤くなった頬を隠しながら言うと、四宮さんがふっと笑みをこぼしたのが音でわかった。

「俺は、浅尾や氷室が正直羨ましいと思った」

パッと顔を上げると、目を細める四宮さんが私を見ていた。

「聞き分けのいい藤崎が遠慮なしに甘えてくれるような存在になるには、どれくらいかかるんだろうな」

四宮さんが私の頬にそっと触れる。
そのまま輪郭をゆっくりと辿る指に息を呑んだ。

「俺の迷惑だとかなにも考えないほど気を許してくれるのを、気長に待たせてもらう」

顎をすくうように持ち上げられ、キュッと唇を結ぶ。
真っ赤になった顔は褒められたものじゃないと思うのに、四宮さんは愛しそうに微笑んで私を見つめていた。



その後、マンションに入りインターホンを押すと、四宮さんと私を恨むような目で見た氷室さんに「遅い……腹減って死ぬかと思った」と文句を言われることになったのは言うまでもない。


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