僕を狂わせるもの

僕は先輩に土下座した。
通りにならない、支離滅裂な言葉を吐いて。
必死に懇願した。

〝 奥さんを僕にください 〟
〝 殺してください〟
〝 ずっと好きでした 〟
〝 申し訳ありません〟
〝 毎日気が狂いそうでした〟

先輩ははじめ困惑していた。
でも状況を把握すると、顔つきは強張り、無言のまま僕等を睨みつけた。

傍に座るあなたは何一つ言い訳もせず、ただひたすら〝 ごめんなさい 〟と頭を下げた。
すべての報いを受ける覚悟で。

先輩は僕を一切責めることなく、彼女を責めた。
聞くに耐えないほど罵倒して。

僕は眼中にはなく、男としても見てもらえなかったと思った。

あなたを庇うどころか、あなたに僕は守られたんだから!


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