僕を狂わせるもの
それからしばらくは怖いくらいに幸せだった。
穏やかな日々だった……。
僕は調子に乗っていたのかな。
簡単に思っていたのかもしれない。
この報いは、僕にかえって来ずとも、僕の大切な人、これから生まれてくるであろう子供に受けるかもしれない。
そうなった時は、あの時の先輩の痛みだと受け止め、この先何があろうとも全力で大切な人を守ろう、だなんて。
いい気になってた。
幸せに溺れていた僕の前に、突然悲しい別れが訪れた。
人を傷つけて奪った卑怯な愛の前に、僕は報いを受けることとなった。
神様は僕から、大切な彼女を奪っていった。
分かっていたけど、こんな仕打ちはないだろ!
なんで!なんで彼女なんだ!
罪を償わせたいなら、彼女ではなく、僕を連れて行けばよかったのに!!
例えようのないくらい哀しくて、淋しくて、二度と彼女に会えない苦しみはこの上ない!
こんなに苦しいなら、こんなことなら、好きになんてならなければよかった!
僕は初めて心の底から後悔した。
彼女の人生まで奪ってしまったんだから。
毎日毎日ひたすら自分を責め続けた。
悲しみに暮れ、次第に歪んだ怒りは神を恨み、僕の心と面は般若の如く変わり果てた。
帰っては来ないあなたを思いながら、僕はどんどん荒んで行った。