青いスクラブの王子様。~私が惚れたのは、一等級の外科医だった件~



深いため息をつきながらデスクに戻ると、あちこちから同情の目が向けられる。

分厚い束をみても、誰も手伝ってはくれない。
でもそれは私も同じ。他の誰かが同じ目にあっても、助けはしない。
そんなことをすれば、浪川部長に目をつけられて終わるから。

昔からこんな冷たいオフィスではなかった。
仕事が溜まっていれば皆で協力して終わらせ、帰りにはよく飲みにも行った。
変わってしまったのは、半年前、前任の部長が病気療養のため辞任し、浪川部長が来てからだ。

この半年で、二人辞めてしまった。
残っている人も、きっと転職先を探しつついつでも辞表を懐に忍ばせているだろう。

しかしこんな環境でも、お給料は充分もらえるし、七年間務めてきた身としてはそう簡単に辞められない。

でもそれ以上に、浪川部長のパワハラに耐えられるのは、何よりも……

青いスクラブの王子様がいるからである。
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