青いスクラブの王子様。~私が惚れたのは、一等級の外科医だった件~



「いーなー!どこで知り合ったのあんなイケメン!ね、ね、今度紹介してよ!私今絶賛婚活中なの!」


モヤッ……

モヤッてなに!

じゃなくて、婚活中の彼女に王子を紹介したら、し、したら、そのまま…け、結婚……とか、するかも…だよね。

あれ、嫌だ。嫌だ。結婚、して欲しくない…っておかしいな。あれ?


「鳥飼さん聞いてる?」

「あ、うん聞いてる。えっと…王子…………彼女、いるみたい」


え?彼女いるみたいって言った?言ったね?
嘘、ついちゃった……。

あ、でも本当に彼女いるかもしれない…けど彼女アリで私なんかと出かけたりしていたら大問題…よね。

咄嗟に出てしまった言葉は、頭の中で波紋のように広がる。

ちがう、ごめん違うよ。今は彼女いないみたい。予定聞いて、紹介するね。

そう言えば、まだ間に合うかもしれないのに、ストッパーがかかったように口が動かない。

最低な嘘だよこれは。だめだよ、こんなの。


「そっか〜、まぁそうよね。あんなイケメン、彼女いないほうがおかしいもん。仕方ない、他をあたるか」


肩を落とす遠井さんに、罪悪感が募る。

なんで、どうしてあんなこと言ったの。

ごめんなさい、遠井さん。

自分がわからない。

ただ、チクチクとかモヤッとか、ほわほわ、どっきどきのバックバク、寂しい、物足りないとか。

感情がおかしいのは確かで。
憧れ、尊い、王子…。それだけではない気がしてならない。

この気持ちがなんなのか確かめるために、旅に出ようかと考えるくらい、私の頭の中はごちゃごちゃしていた。




< 68 / 129 >

この作品をシェア

pagetop