今日から不良王子と同居します。
「ふうん、お散歩ね。確かにだだっぴろい敷地だよな。玄関までたどり着くのに何分かかるんだよって話」


「この辺りは田舎だしそんなに土地が高くありませんから。でも神崎家のお邸の方が凄いんじゃないですか?」


「まあ、本家は凄いけどね。でも俺はもうあそこには帰るつもりないから」


その時、彼の表情が一瞬暗くなったことに気が付かなかった。


「えっ、どうして?」


「なんだ、なんにも聞いてないの?」


「なんにもって?」


「俺の事情とか知らないで預かるつもりでいるわけ?」


「お父様からは神崎家のご子息をしばらく預かることになったから大切におもてなしするようにって言われていますが」


あとそれと、彼については少し複雑な家庭の事情があるからとも父は言っていたっけ。


「ああ、そうなんだ。
聞いてるのはそれだけなんだ。

俺は神崎の第2子で長男じゃないから家をつがないし、気楽に育ってきたんだよね。
ああいう堅苦しい家のしきたりとか俺には合わないしほんとは家を出て一人暮らししたかったんだけど許してもらえなくて。

とりあえずしばらく大河内家に居候させてもらうことになってさ」

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