シークレットガール
「第8章」
「遅いなー」
月曜の放課後、私は退屈そうにしながらそう言った。確かに呼んだはずなのにな。
ここはうちの学校の裏庭だ。滅多に人が来ないので私には都合が良すぎるのである。
かおるちゃんに裏庭に来てほしいって、確かに言ったはずなのにまだ来てないや。
「ねー、本当に来るのかな? なんか来る気配が全くないんですけどー。」
「うるせえな! そのうち来るだろ! ちょっとお前、黙っとけ!」
星野くんは少しイラッとしたようだ。でも退屈なのはお互い様だと思う。
あれから30分くらいが経って、ようやくかおるちゃんは姿を現した。
「来た! 私、行ってくるね! あんたも準備してよね!」
「わかったよ!」
私は彼女の背後にそっと近づき、彼女の耳にそっと囁いた。
「随分と遅かったねー。待ちくたびれるとこだったよ。あんたなんかにこんな待たされてちょっとイラっとしてるし、早く終わらせてもらうねー。」
私のその言葉に彼女はすごく驚いてるように見えた。私は構わず鞄からそっとカッターナイフを取り出し、彼女の首にそっと近寄せた。
「な、何してるの? それ、危ないよ。」
そう言う彼女の声は震えていた。相当怯えているようだった。
「何してるって、そりゃあなたを殺そうとしてるに決まってるでしょ。でもなんかあなたとこんなことしてもそんなに面白くなさそうだし、早速やろうと思ってるけど別に良いよね?」
私はそう言って、カッターナイフで彼女の首をそっと切った。それだけじゃ死なないことはよく知っている。
「どうかな? 痛い? 痛いよねー。なんか浅く切ってしまうとすごく痛いんだって言うじゃん? だからそれが本当かどうか試してみたいと思ったの。でもそれは本当みたいだね。じゃあ無駄話はこれくらいにして、そろそろ本気でいくね!」
私は鞄から包丁を取り出し、彼女の方へ近づいた。彼女はそっと後退り、私にこう言った。
「な、んで私にこ、こんなこと、するの? ひ、ひどいよ。」
「なんかあんた、ムカつくから。」
私はそう言って、右手に持っていた包丁で彼女の心臓を刺した。大量の血が噴き出し、彼女の体から力が抜けていく。私は彼女から一旦離れ、鞄にカッターナイフを入れた。そして彼女の死骸をズタズタに切り刻み、それもまた鞄に入れた。
そして最後に包丁を入れて、周りを見回す。誰もいないようだ。
私はそっと左に曲がる。そこには星野くんが待っていた。
「よー、おつかれー。今回も派手に暴れてくれたじゃねえか!」
彼はそんなことを口にしていた。別に暴れた記憶はないけど。
「なんか私のこと勘違いしてない? 私はただ知りたいだけなのになー。」
「十分頭おかしいヤツに見えるぜ。そんなことより早く帰ろうぜ。こんなとこ見られたら困るんだろ?」
「わかってる! 私もう帰るから。」
そう言って私はその場を離れた。遠ざかる私にそっと笑いかけたのを覚えてる。ちょっとイラッとしたが、私は特にこれといって対応はせず、先を急いだ。
少し疲れていたこともあり、早く帰りたいと言う気持ちが大きかった。右手に持っている鞄の中には私の小さな罪の証拠が詰まっている。
うん? 小さくなんかない? むしろ大きい方だって? これは私にとって最低限の犠牲というやつだ。まあ、多少社会のルールに反しているかもしれない。
そんなことを気にして、罪悪感とか感じていた時期もあったけど、今となっては全く気にしてない。
あ、そう言えば星野くんにあれ聞くの忘れちゃったなぁ。別に急ぎの用ってわけでもないし、また今度にしよう。
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