シークレットガール
「第2章」
夜が明けてすっかり外は明るくなった。昨日、約束はしたが、不安は消せない。もう通報しているかもしれない。まあ、まだ警察は来ていないのでその可能性は極めて低いけど。
さて、何をしよう。今日は土曜日だ。のんびり出来ると思うとつい浮かれてしまう。
まあ、でも特に何かをしたいとは思わない。今日のところは取り敢えず眠るか。
いや、今日は出かけよう。ショッピングとか良いかも。美波でも呼ぼうか。
藤林美波、私の友達だ。ベストフレンドってところだ。もちろん「検証」のことはまだ話してない。だから多分知らないのであろう。
言えるわけがない。今の関係が壊れるのも嫌なので私も一応黙っている。彼にはバレてしまったけど。
そういえばこの前、美波に星野くんの電話番号をもらったんだっけ。
そう、彼はクラスでは人気者だ。うちのクラスだけではない。この学校の人気者だ。
私は正直、あんまり興味がなかったので彼の電話番号なんて必要なかったんだけど美波が「絶対後悔するだろうからもらっておいた方がいいと思うよ。」と言っては無理矢理彼の電話番号の書かれたメモ用紙を私に渡した。
彼が本当に黙ってくれているのか少し気になるし、ちょっと電話してみようか。
発信音が延々と鳴り響く。全く出ない。まあ、後で掛け直すか。
そう思い、通話終了ボタンを押そうとしたが、さっきまで鳴り続けていた発信音は止まり、私のスマホの画面は通話画面が表示されていた。
あれ? 繋がってる? 私の知らぬ間に勝手に繋がっていたのか。まあ、私には好都合だけど。
私はそっとスマホを私の耳に当てる。そして「もしもし? 私、加藤だけど。」と言ってみた。
もし違ってたらどうしよう。少し不安になったが、それは余計な心配だった。
ちなみに私の名前は加藤茉乃である。まあ、あんまり気に入ってはない。だって父親の苗字である「加藤」が入っているから。変えたいけど色々手続きが面倒だということで後回しにしているところだ。
「加藤? ああ、茉乃か。お前、何で俺の番号知ってんだよ? ちょっと気持ち悪いんだけど。」
「そんな言い方はちょっと酷いと思う。それに私だって友達に無理矢理渡されただけだからね。」
「まあ、それはともかく何だよ? 何で電話したんだ?」
ここは素直に答えよう。まあ、そもそも隠す理由もないんだし。
「暇だったから電話しただけ。特に用はない。あんた、昨日のことまだ誰にも言ってないわよね?」
「約束したじゃないか。俺、結構口が重いんだぜ? 舐めてもらっちゃ困るぜ。」
「なら良いけど。じゃもう切るね。話すこともないし。」
そう言って電話を切った。誰にも言ってないって分かったんだし、ちょっと心が軽くなった。
それからはただひたすらに本を読んだ。あんまり面白くはなかった。本のタイトルは「黒ずんだ心」という小説だ。
とある男が自殺をしたいと思い、工夫をするという内容だ。この男はそこまでして死にたいと思っているのか。
わからない。私にはよく理解できなかった。する価値もないと思うけどね。
この小説では「もう生きていても良いことがないと思うから」と言及している。
そんな理由で人は死ぬのか。本当に愚かだな。そう思いながらそっと本を閉じた。
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