シークレットガール
「第3章」
「やっと本田くんが死んだ! なんか超嬉しい!」
美波がいつもより高揚した声でそう言った。今、うちのクラスでは本田くんの自殺 -になっている-に関してほとんどの生徒が語り合っている。今朝、知らされたばっかなんだし、仕方ないか。
だから私も美波とその話題で盛り上がっているところだった。実際、私もキモいと思ってるし。思い出すとつい笑ってしまうんだよね。
「なんか本田くんってよく死んでくれたわよね。生きていてもなんの役にも立たないしさ。」
美波は「そうだよねー アイツ、超キモオタで何か変な匂いもするんだよね。マジで死んでくれてよかった!」と答える。
罪悪感はあるかって? ないよ、そんなもん。そんなもんがあったならばもう既に死んでいると思うよ。
「学校終わったらカラオケ行かない? 何か気分いいし、歌いたくなった!」
「いいよ! みんなも呼ぼう!」
「うん、そのつもりだよ。絶対忘れないでよね!」
そう言って美波は自分の席につく。私も席について窓の外を見た。そこには群青の空が果てしなく広がっていた。
気持ちいい。生きているということはこんなにも気持ちいいものだったんだね。私はこれからも生きてたい。そう思った。
帰りのホームルームが終わって放課後になった。美波は私の席に駆けつけてきた。
「じゃあ行こっか!」
「まだ掃除あるじゃん。」
「そんなもんサボっても良いって。ほら、みんな待ってるから!」
「今回だけだからね!」
相変わらず元気な子だ。何がそんなに嬉しいんだか。まあ、見好いので放っておいても良いか。
カラオケにやってきたのは私を含めて4人だった。私と美波と雪子とそして星野くん。
星野くんはなぜここにいるのか。まだ聞いてないが、美波が連れてきたらしい。
ちょっと気まずいが、仕方ないか。バラすわけにもいかないんだし。
こうなったら楽しもう。そう思い、思いっきり歌いまくった。正直、あの時のことはあんまり覚えてない。私は余計なものはあんまり頭の中に入れないタイプなので。
私がただ忘れん坊なだけなのかもしれないけど。でもこれだけはしっかりと覚えている。
美波たちと別れて星野くんと私は偶々帰る方向が同じだったので一緒に帰ることになった。
「お前、表面上は良い子なんだな。」
星野くんはいきなりそう言いだした。表面上だけ良い子か。そういう人にはなりたくない。今の私は良い子なんかじゃないし、良い子を演じたこともない。
私は私だ。私以外私じゃないのさ。私はそう思う。
「私は私だよ。良い子なんか演じたこともないわ。」
「本人がそう言うならそうなんだろうな。まあ、どうでも良いや。」
そう、これはどうでも良いこと。ただ私は「検証」をしているだけの研究者である。
そう、私は研究者。人類が一生、悩み続けてもなお解明しきれてない難題を私は問い続けているだけだ。
私は間違ってない。間違ってないはずだ。もしそうじゃないなら私は壊れてしまうかもしれない。
生きる「意味」がなくなってしまったらきっと私は「死にたがり」に成り下がってしまうだろう。
そういう確信が私にはある。そうならないように私はこれからも問い続けていきたい。そう思う。
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