愛は惜しみなく与う⑦
「お前は東堂家が潰れると思ってたんだろ?」
あの頃と変わらない笑顔のサトル。でも今はそれが不気味に見えてしまう。
サトルの問いかけに頷く。
そう
私は潰れると思ってた
お母様のことはよく分かってるつもりだったから。きっとお母様は、私が死んでしまったら生きる気力を無くす。
経営的にお母様くらい動ける人は居ない。強いて言うなら、本気を出せば志木くらいなら立て直せるかもしれない。
でもそれくらい…お母様はすごくて、そして脆かった。
一歩間違えれば、この大きな財閥が一瞬にして消えてしまうくらい…お母様は脆くて素晴らしい人だ。
私は知ってた
私が居なくなれば、お母様が壊れるのを。そして東堂が潰れるのを………それでもいいと思ったんだ。
ダメだよ、お姉ちゃん
やっぱり私は家には帰れない。
多くな人の生活を背負う覚悟なんてないよ。全員居なくなればいいのにって思ったんだから…
「お前は東堂家が潰れると思ったけど、俺は違う。俺は必ず……杏なら必ず後を継ぐと思ってたんだ」