愛は惜しみなく与う⑦
「もし昔…出会ってたら、救ってくれたのかなって。どうやって声をかけてくれたのかって……ちょっと想像したくなった」


「……」


何も言えなかった


もっともっと嫌な奴じゃないと。もっと救いようのない奴じゃないと…
あたしは…本気で憎むことができひん。



「杏、変われ」

「泉…」


後ろから伸びてきた腕は、あたしの目を覚まさせる。



「お前の妹がこんなんになったのも、志木さんがそこで死にかけてんのも、お前のチームの奴らが昔傷ついたのも…杏が…杏が自分を捨てて、妹になろうと頑張らなきゃいけなかったのも…こいつのせいだ」


泉にはあたしが揺らいでるのが分かったんやな。必死で訴えてくる泉に泣きそうになる。


「こんなことなけりゃ、杏は、こんな辛い思いせずに済んだんだ!杏は……優しすぎる。もし杏がサトルを許さなくても、杏はいい奴だよ。酷いやつなんかじゃない。自分を責めるな…おねがいだから。
でも、色々あって杏に出会えたのかと思えば、複雑な気持ちになる」


あたしの手を優しく引いてサトルから遠ざけるように引っ張る
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