愛は惜しみなく与う⑦

「告白宣言とかあいつ、とち狂ったか?」


朔が口を開けたまま、慧が出て行ったドアを見ていた。全員驚いたよね。

勝手に1人で納得して、1人で清々しい顔をして出て行った。

うん、いいんだよ。気持ちはわかる。


俺もいつまでもうじうじしてたらダメだな。


杏に心配かけちゃう



「俺も、バイトの時間だから行くよ。昨日…サボっちゃったから」


安達さんには連絡したけど、こっちの都合でバイト休んで最低だ。体調悪いって嘘をついてしまった。



俺は杏が一緒に帰らなかったことがなんでだろってずっと疑問だった。

あんな状態だから同じタイミングで帰れないのは分かってたけどさ。


あんなに待っててという言葉が悲しく聞こえた事はない。


俺は家族とのケジメはつけていない。でも年に数回、父親とは連絡を取る。
母親は……あの忌々しい記憶のあの日から、一度もあってもないし連絡もしていない。


でも逃げてるんじゃない

必要がないんだ

家族に戻りたいとは思わないから


それよりも俺は、この先、烈火を卒業してから生きて行く力のほうがよっぽど必要だ。
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