愛は惜しみなく与う⑦
「安達さん!!すみません!昨日は!!仮病使いました!!!」
店に入るなり頭を下げると、バイトの吉田さんがいた。
あれ?安達さんは?
「あれー?響先輩どうしたんですか?てゆうか昨日のお休みは仮病だったんですか?」
クスクスと笑う吉田さんは、この店のホールスタッフだ。俺の1つ下の女の子で、俺の事情を知って、絶妙な距離を保って接してくれる、器用な女の子
「あ、えっと、吉田さん。安達さんは?」
鞄の紐を持つ手に力が入る。
怖くないはずなのに、身体は勝手に反応する。
「もう。吉田さんじゃなくて、えみりで良いって何回も言ってるのに。まぁいいや。安達さんなら買い出し行きましたよ」
てゆうことは
今は吉田さんと2人か
ふぅ
落ち着けば大丈夫だ。彼女は必要以上に迫ってくる女の子じゃないから。
「で?仮病ってなんでですか?てゆうか言わなきゃ風邪だと思ってたからバレないのに」
「あ、そうか。なんか安達さんに嘘つくとか嫌で……」
嫌なくせについてしまった。本当に謝らないと。言わなきゃバレないけど、真剣に向き合う人に、嘘をつく行為は失礼だ。