愛は惜しみなく与う⑦
安達さんは料理の知識が凄いんだ。全部吸収してやるつもりでバイトしなきゃ
「響先輩、何かあったんですか?」
「え?何もないよ。風邪も引いてないし」
キッチンにはいりオープン準備をする。吉田さんはカウンターを挟んで向こう側にいる。
コップだして…予約の仕込みもして…
「響先輩、疲れた顔してるよ?なんだかとても寂しそう。大丈夫ですか?」
カウンターから身体を乗り出して顔を覗き込んできた吉田さんに、ひゃ!と男として情けない声が出た。
はず!
「あ、ごめんなさい。近づきすぎたかな。でもなんだか……寂しそう。えみりで良ければ話聞きますよ」
なーんて
響先輩が私に相談することなんてないですよねーと笑った
驚いた
この子には、俺がそんな風に映ってるのか
よっぽどダサい顔をしてるんだな。
泉と朔が想像以上に落ち込んでるから、しっかりしなきゃとは思ってたのに。
俺もダメだな
杏がいないと不安で仕方ないや
「吉田さんは、大事な人っている?」
なんだが今この空間で、吉田さんと話してみたくなった。カウンターを隔てたこの空間で。