愛は惜しみなく与う⑦
「大事な人ですか?そうですね。居ますよ」
「俺にも…いるんだ。よくここに食べにくる奴ら。すごく大事なんだ。でもその中の1人とさ、いつ会えるかわからない状態になっちゃったんだ」
こんな話、面白くもないし聞きたくもないよな
なんで俺は喋ったんだろう。話した後に後悔して、今の話はなし!とどうやって取り消そうかとアタフタしてると、吉田さんは言った
「えみりの両親は、事故で5年前死んだんです。そこからお姉ちゃんがえみりのお母さん代わりになってくれました。えみりは…お姉ちゃんが大事です。響先輩の大事な人と同じで、家族です。
えみりは……会いたくても会えなくなると言うことを知ってます。
響先輩は、その人には、いつ会えるかわからないけど、会える可能性はあるんですよね。それって素敵です。会えるまでの期間、なんでもできちゃうんですよ」
…俺はなんてことを聞いてしまったんだろう。
人一倍踏み込まれるのが嫌いなくせに、そう言う事に鈍感で、人を傷つけてしまうくらい踏み込んでしまった。
吉田さんの悲しい顔は初めてみた
「あ、待って待って!そんな顔しないでくださいよ!えみりはもう吹っ切ったんです。ただ…響先輩もあの時の私と、同じような気持ちになってるなら……それはとても悲しい事だなって思ったんです」