愛は惜しみなく与う⑦
話し方?関西弁やけど?

もうそれどころじゃなかった。
いくら母上の前でも……話し方変えてる余裕がなかった。


「私は……私はあの日、貴方が自分が死んだことにしろと警察に言ったあの日を、ちゃんと覚えてるの!!!
貴方があの日以来、鈴ちゃんの振りをしてたのを私は…見て見ぬ振りをした。

全部全部知ってたの!この半年、自分を鈴だと言う杏を、私は…知ってた」



え?
どう言うこと?


最初から…

分かってたん?


母上?


「本当に鈴ちゃんが居なくなったんだと思った。私の娘は…杏だけになったと思ったの。でも私は貴方に対して酷かった。だから……

貴方が鈴の振りをしてるのに甘えた。鈴ちゃんの愛し方ならわかるから。それで私は、貴方も愛してる気でいた」


お母様は初めからわかってた。
鈴の振りをするあたしを、不器用に愛したってこと?

愛し方もわからないから?


「あたしには……よくわからへん。あたしのことを愛してくれるなら、あたしを見て欲しかった。あの時あたしが鈴の振りしてたけど、中身は違うんやで。中身は杏じゃない。中身は空っぽやった。

鈴を通しての愛なんて、あたしが感じる訳…ないやん」

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