愛は惜しみなく与う⑦

あたしの知ってる母上じゃない

弱々しく話す母上は、小さく見える


「あの人に言われることはなんでもした。東堂の経営を任されると知って、寝るまも惜しんで勉強をした。人との繋がりが大切な仕事。どこにでも足を運んで顔を売って、東堂の名に恥じないように振る舞った。できることは全てした。
でも、どれだけ頑張って認めてもらおうと思っても、あの人は私を見てくれなかった」



は、はうえ?



「私はあの人を繋ぎ止めるために、貴方を妊娠した」



その真実はあまりにも衝撃的で、固まってしまった。反応できひんやろ

でも結果として


あたしはお父様を繋ぎ止める役には、なれへんかったってことや。


「杏、貴方はね、とても小さい頃から……怖いくらいに勘のいい子だった」

「勘がいい?」

「そう。貴方が言葉を話し始めたくらいから……貴方は私とあの人の事を勘づいていた。自分がいい子に居なきゃ、お母さんが叩かれるって、貴方はわかってたのよ」



え?なにそれ
叩かれる?


「お、お父様は、暴力を?」

「ええ。貴方を…産んだから。離婚して他の女との子供を後継にさせたかったんじゃないかしら。でも…私は産んだ、貴方を。
あの人はそれが、許せなかったんでしょうね」
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