愛は惜しみなく与う⑦
そんなこと……
そんな悲しいことがあったなんてあたしは知らない。


「貴方をみるたびにね、あの人が怒るの。2人の子供なのに…なんで産んだんだって。その度に私は暴力を振るわれた。誰にも言ってない。東堂が終わってしまうかもしれないから」


「そんなん!!言えばいい!!そんな最低なことする奴の居場所なんて、潰せばいい!!なんで母上は……耐えたんですか」


最後は力なく言うしか出来無かった。
それを尋ねたところで答えはわかってたから。


「結婚して子供を授かったから。こんな中でも私は、東堂を守っていく覚悟はしていたから。一度やると決めた事は、投げ出さない性格なのよ。だからそうね……」


母上はあたしの目を見て言った


「貴方は私に、恐ろしいくらい似ている」


母上があたしに似てる?
そんなこと言ってもらったことない。頑固なところは似てるなって思ったけど…


「貴方はね、一生懸命あの人に笑顔を見せたの。機嫌を損ねたら私が叩かれるから。小さいのにね、本能で母親である私を、貴方は守ったの」


「…あたしは、なにも覚えてない」
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