愛は惜しみなく与う⑦
「当たり前でしょう。あなたが4歳くらいの時ですから。歪な形だけどね、家族として成り立ってたの。鈴も生まれてね…私はまたここから再スタートができると思った」
歪や
歪すぎるやろ
外は真っ暗
離れた場所にあるあたしの病室は、気持ちが悪いくらい静かや
「鈴が3歳。貴方が5歳になった時、離婚を切り出されたの」
「え?じゃあ今は…」
「離婚はしてないわ。あの人も…よく考えたらリスキーだと分かったんでしょう。その頃東堂の経営は、私を中心に回っていたから。あの人も東堂を捨てることはできない。肩書きがなければあの人は、ただの役立たずなので。
それでね、本格的に自覚したの。
あぁ、私が投げ出して仕舞えば、この大きな財閥は瞬く間に崩れていくんだなぁって。
確かにあの人は最低だったけど、東堂の人には良くしてもらった。だから恩返しのつもりで、疲れ果てるまで経営に回ろうと思ったの。
でも初めは、旦那様に捨てられた女。学も地位もたいしてなかった田舎の娘に何ができるって…罵られる日々だった。
あたしはね、貴方に八つ当たりをしたのよ」