愛は惜しみなく与う⑦
壁にもたれかかって座り込む泉のそばに行ってしゃがむ。

泉の大きな手の甲が赤く血で滲む


「目は…見えない?」


下を向く泉の顔に触れて、上を向かせる。
綺麗な顔に傷がいっぱい。


「目、痛いな。もっかい洗ってくる?」

「いや、大丈夫。全身かぶってきたから」


確かに、泉だけ風呂でも入ったんかってくらいビチョビチョ。
身体も催涙スプレーがかかったんやろな。


「目、開けなかったけど、杏の可愛い顔が見たいから……目が開けれるようにった」


こんな時になにゆうてんの
こんな状況で笑ってそんなことを言う泉に、あたしも笑ってしまった。


「朔たちは?無事か?」

「うん。昴に…外連れて行ってもらった。みんな無事やで。泉だけやで、こんなボロボロなん」

目の腫れは少し引いてるかな
保冷剤とかあれば冷やせるんやけどな。


「久しぶりにいっぱい殴られた」

「うん、せやな。痛そう」


口の端も両方切れている。目を開けれないから、避けれへんよな。



「ありがとう。あたし頑張れる。泉もここから出て…雄作さんのところへ行ってほしい」
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