愛は惜しみなく与う⑦
サトルは何故か泉を敵対視してる。
志木ではなく、泉を。
何かある時、1番に狙われるのは泉や。
あたしは鈴を守るので手一杯になると思うから……志木はそろそろ怪我であかんやろし。
泉もこんな状態じゃ、ここに居るのは危険すぎる。
「なぁ、無視せんといて?」
お願い。
そう言って泉の手を掴むと、あたしの手を強く握り返して言った。
「キスしてくれたら言うこと聞くよ」
その顔は、切なくて、泣きそうで、自分がこんな顔をさせてしまったのかと思うと、胸が苦しくなる。
「せんと思ってるやろ。」
極限状態で、あたしも頭キャパオーバーやねん。だから、難しいことは考えれへんねん。
「キスして言うこと聞いてくれるなら、するよ?」
こんなこと言えてしまうあたしは、最低や
泉が掴む手に体重をかけて、体を前に乗り出す
目の前には泉の顔
泉は閉じていた目を、しっかり開いてあたしを見た
傷だらけやのに、相変わらず綺麗な顔やな
キスってさ、唇にせんでも、キスって言うの?直前で止まってしまった。