結婚はあきらめ養子を迎えたら、「お義母様大好き」と溺愛されています
 っていうか、その日は都合が悪い、体調がすぐれないだの言って断ったって、都合に付き合うだのお見舞いに来ただの、押しかけてきたのはどこの誰だか。
 かくなる上は、姿をくらますしかないと思うのよ。うん。
「それで、どのようなご用件で?ルイード王弟殿下」
 目の前に立つ男の顔を見上げる。
 3つ年上だとか、仮にも王弟に対してだとか、不敬だなんだと言うような関係ではない。
 言うなれば、幼馴染というか、親戚関係でもあるため、小さなころからしょっちゅう顔を合わせていたというか。まぁ、兄妹に近いというか……。
 ルイードが私の手を取った。
「そろそろ、婚約しないか?」
「そのお話は、生前父がお断りしたはずです」
 何度目の会話になるのか。
「ああ、確かにな。私のかわいいリーリアにブースと言ったお前との婚約など許さぬと断られたな」
「そうですわ。私が5歳、ルイード王弟殿下が8歳の時でしたわね。私の顔を見るたびにブスが来ただの、ブス、ブス……と」
 ルイードがバツの悪そうな顔をして頭をかく。
「それは、あれだ。俺も普通のガキだったってことで……分かるだろ?」
 何が分かるというのか。

「お茶をお持ちいたしました」
 メアリーの声に、立ったままだったことを思い出し、向かい合わせのソファに座る。
「とにかく、父が断ったお話を、私が受けるわけにはいきませんわ」
 きっぱりと断ると、ルイードが私の顔をまっすぐ見た。
「兄の2人目の子供も3歳になった。第一王子に続いて第二王子も順調に成長しているとなれば、俺が王族に留まる必要もない」
 そうね。確かに。
「王弟殿下をやめて、なんとか公爵家でも興すのかしら?それとも、隣国の王女とでも結婚するのかしら?」
 ルイードが立ち上がり、私の隣に腰を下ろした。2人掛けのソファだけれど、体の大きなルイードが座ると、体が密着して狭く感じる。
「なんとか公爵家じゃない」
 ルイードの顔がすぐ隣にある。
「俺が、ロマルク公爵になるんだ」
 なっ。それって!
「私を殺すつもり?」
 驚いて立ち上がる。
 昔から、意地悪ばかりされてたけれど……髪の毛を引っ張られたり、そう、池に落とされたこともあったわ。
 ルイードに取っ手私は玩具みたいな物だったのかも。ルイードからの婚約の打診をお父様が断ってくれた時には、本当にほっとしたもの。
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