結婚はあきらめ養子を迎えたら、「お義母様大好き」と溺愛されています
 あけ放たれた扉の向こうにアルバートの姿が見えた。
「お帰りなさいっ!」
 これ、どうすればいいの?
 両手を広げて待っていればいい?
「ただいま戻りました」
 アルバートの表情はなんだか硬い。
 あれ?
 両手を広げて待ってても、来ない……。
 えーっと、やっぱり、朝のことがトラウマになっている……。傷ついている。
 それとも、待ってるだけじゃダメかしら?
 それなら。
 てこてこと歩み寄り、アルバートを抱きしめた。
「おかえりなさい。無事で何よりです」
 腕の中のアルバートが固まる。
 ……というか、身長差。
 なんか、思ってたんと違う。
 私の顔が、アルバートの胸にある?
 おや。これ、まるで私がお父様お帰りなさい!と、お父様の胸に飛び込んだみたいな形と何ら変わりがないのでは?
 待って、私が親。
 私が親なの!こう、親が子供を包み込むような、そういう感じと違うんだけれど……。
 えーっと。
 アルバートも困るわよね。まるで子供が胸に飛び込んでみたみたいに急に私に抱き着かれても……。

 どうしましょう。
 踏み台を用意する?そのうえで、上から包み込むように抱きしめる?
 わざわざ踏み台を?
 ……玄関に「セバス、踏み台を用意して」というのもおかしくない?
 ……おかしいわよね。踏み台のある場所から私は動けなくなるし。
 近づいて抱きしめるとかできなくなる。……いや、実現しようとすると、常に私の後ろに影のように踏み台を持った使用人が付いて回るという……。
 想像してみたけれど、うん、……なしね。
 なし。
 ってことは。
 一旦体を離して、アルバートの顔を見上げある。
「えーっと、お帰りなさいアルバート。ちょっとかがんでもらえる?」
 アルバートは素直に膝をついた。
 ……うん、騎士養成学校だから、さまになるわねぇ。
 優雅な仕草で片足を後ろに引いてさっと膝をつく。立てている膝は直角推奨。見上げる顔が何とも美しい。
 って、うちの子さすがとか思ってる場合じゃなくて、おかえりなさいをやり直し。
「おかえりなさい、アルバート」
 両手を広げて私の胸元当たりまで顔が低くなったアルバートを抱きしめる。
 うん。これで、親が子供を包み込むように抱きしめてる感じが出てるよね?
 って、思ったんだけれど、アルバートが先ほどよりも体を固くしてしまった。
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