結婚はあきらめ養子を迎えたら、「お義母様大好き」と溺愛されています
 まぁ、とにかく、最悪命を狙われかねないので、公爵家とのつながりはなるべく隠せるうちは隠すようにということだ。
 ……というわけで、バレないようにと緊張して授業に臨んだものの、そう簡単にバレるわけもなく。
 普通に授業は終わった。
 その後、自首勉強をしようと思ったけれど……。
 リーリア様の力になれるよう、領主としての勉強をと、思ったけれど……。
 朝の失敗が気になって仕方がなかったので、今日は大人しく帰ることにした。
 失敗……。
 そう。
 思わず……。
 思わず、抱きしめてしまった。
 小さな手が、僕の肩に伸びて励ますようにぽんぽんとされた瞬間、どうしようもなく愛しく思えて……。
 そう、愚かにも「親子なら抱きしめて出かけるときの挨拶くらいするから問題ないはずだ」なんて言い訳を用意して……。
 そう、母は、よく僕たち兄弟をぎゅっと抱きしめて送り出してくれたから。
 だから、もし、問い詰められたら親子なら普通だと言い訳しようと……。
 思って……。本当は、単に、抱きしめたかった。この腕に包み込みたかった。
 触れたくて……リーリア様への欲望……げふんげふん、愛情が抑えきれなくて。思わず。
 リーリア様は、僕を問い詰めることなく、ただ、僕の腕の中で身を固くしていた。
 そう、身を固くしていたんだ。
 あれは、驚かせてしまったのだと思う。

 そうだよな。そりゃ、まだ正式に親子になってないどころか、いや、親子になるつもりはなく、夫になりたいんだけど、まぁ、どちらにしても、昨日はじめて顔を合わせた人間にいきなり抱き着かれたらそりゃ、ビックリするよな。
 もっと、ゆっくりことをすすめないとダメなことは分かっている。分かっているんだけれど。
 欲望……いや、愛情が暴走してしまった。
 今までは、どんな熟女を見ても、節度を守って、手が偶然触れ合うくらいで我慢していたのに……。
 いや、ほら、ダンスの先生なんだから、手が触れるくらいあるでしょ。保健の先生なんだから……あ、いや、その。もごもご。
 と、ここまでは楽観的な考え。
 絶望的な……ことも、頭をグルグルと回っている。考えないように、考えないようにしていたけれど。
 どうしても、考えてしまう。
 身を固くしたのは「嫌だったから」という可能性……。
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