結婚はあきらめ養子を迎えたら、「お義母様大好き」と溺愛されています
「ったく、もうちょっとうまいやり方があっただろうに、どうしてああこじらせたのか……。うちの息子たちには悪い見本として真似しないように教育するのに大変役にたちましたが……」
 ぼそぼそとハンナが何かをつぶやいている。
「悪気があるわけじゃないんですよね……。お嬢様が馬に乗ってみたいと言えば、一番立派な馬を連れてきたり……。はじめて乗る馬は小さくて気性が優しい人懐っこい馬にするべきなのに、城で一番大きくて早くて立派で乗りこなすのが困難な将軍の馬とか持ってくるとか……。馬鹿なの?馬鹿なの?馬鹿なの?ああ、いけませんわ。思わず不敬なことを考えて……馬鹿よね?」
 まだ、ハンナがぶつぶつとつぶやいている。まるで呪いの言葉のように、なんだか、こう、音色が怖い……。
「えーっと、ハンナ、大丈夫よ。はっきり後継者問題は近く解決すると言ってやったわ!」
 ハンナがこめかみを引きつらせている。
「そんなことで引き下がりますかね?あのこじらせ……いえ、王弟殿下が」
「え?でも、アルバートが養子になってくれれば、ルイードが私と結婚する意味ないよね?」
 ハンナがふっと遠い目をした。

「まぁ、多少は殿下にも同情いたしますけれど……どうして、リーリア様は全くわかっていらっしゃらないのか……」
「何?ハンナ、ルイードの何を知っていると言うの?」
「そんなことで諦める王弟殿下ではありませんよ……。きっと、子供には父親が必要だろうとか言い出しますよ?」
 はっ。
 そうだわ!
 確かに、確かに、子供には母親と父親がそろっていた方がいいのかも。
 ルイードの言う通りねって、たまにはいいことを言うのねって思うかもしれません。
「ハンナ、どうしましょう。アルバートに父親を作ってあげないといけませんね……」
「いえいえ、リーリア様、王弟殿下に何を言われようと心を動かしてはいけません。よく思い出してください。リーリア様には母親がいませんでしたが、母親が必要でしたか?」
 あら?そういえば……。
「時々、私にもお母様がいればいいなぁと思うことはあったけれど、必要だったかと聞かれれば……確かに……」
 ハンナの顔を見る。
「私にはメアリーやハンナが……そしてお父様がいてくださったので、いなくても平気でしたわ」
 っていうことは。
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