結婚はあきらめ養子を迎えたら、「お義母様大好き」と溺愛されています
 そうそう、親が子供より先に寝ちゃうなんて恥ずかしいと思ったんだった。
 これは親の意地なんだわ。
 バタンッと、大きな音と、ぎゃぁーーーっという激しい悲鳴で目が覚める。
「え?何事?」
 慌てて目を覚ますと、ドアの入り口で松葉杖をついて顔面蒼白のハンナの姿がある。
「ああ、ハンナ。無理しなくていいのに、今日から出勤?」
 松葉杖を突いてはいるけれど、しっかり侍女の服装を身につけている。
「そ、そうです。メアリーと相談して、サプライズで仕事に復帰して、今日は朝、お嬢様を起こしに行って驚かそうと……」
 上半身をベットからおこしてふっと笑みがこぼれる。
「それにしては、私じゃなくてハンナの方がずいぶん驚いた顔をしているわね。というか、私も悲鳴に驚いたけれど、どうしたの?」
 ハンナがワナワナと震えて指をさしている。

「へ、部屋にいらっしゃらないから、探してみれば……」
 ん?部屋にいない?
 顔を上げて改めて部屋の中を見回す。
 あら、本当だ。ここ、アルバートの部屋だ。
 うっかり寝ちゃったのね。
 ううーんと声を上げながらアルバートがもぞもぞと布団の中で動いている。
 アルバートってば、ハンナのあの大きな悲鳴でも起きないなんて……。
 ちょいちょいとほっぺをつついてみる。
 うーんってちょっと反応して可愛い。ふふふ。つい、寝てる子で遊んじゃうわね。
「だ、だ、だ、誰ですか、そ、その殿方は……」
 殿方?
「ああ、ハンナはまだ会ったことが無かったわね。殿方じゃないわよ?アルバートよ」
 ベットから降りる。
「ア、アルバート様?え?」
「ふふ、ハンナのアドバイスでなかなか仲良くやれてると思うの」
 あわあわとハンナの口がパクパクしている。
「うちの息子(10歳)と同じくらいだと伺っていましたが……」
「ええ、ハンナの息子(16歳)とよりは少し上の18歳よ」
 ハンナがふらりとよろめく。
「じゅ……1、8、さ……」
 危ない!
 倒れそうになったハンナを、さっそうと現れたセバスに支えられた。
 その隣にはメアリーの姿もある。
「ああ、メアリー、セバスも……わ、私ったら、勘違いをして、とんでもないアドバイスを……お嬢様に……まさか、アルバート様が少年ではなく青年だったなんて……」
 え?
 あれ?
 ハンナは知らなかったの?
 あれ?
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