【短】あの夏を忘れない
愛が足りない。
もっと、もっと、欲しい。
そんな恥ずかしいくらいの欲望は、日ごと膨らんで…破裂してしまいそう。
それでも、私はそういう気持ちを一度も態度には出すことなく…凛とした面持ちでいつも彼と逢う。
ミステリアスな女を演じていれば…きっと貴方は私から離れない。
何処か影を持つ女を演じていれば…中途半端な優しさを握っている貴方は、けして私を捨てることはない。
だから、そこに私はすがり付いて、また泥のように眠るんだ。
彼に抱かれた自分自身をぎゅっと抱きしめたままで。