揺れる想い〜その愛は、ホンモノですか?〜
ロッカー室から出て来た怜奈は、一瞬目を疑った。だって、なぜか小さくなって、焼きそばを食べている鈴の前に、2人の若い男性の姿が・・・。


思ってもいなかった状態に、やや慌てて、怜奈が彼らに近づくと


「あっ、怜奈。」


とホッとしたような鈴の声。これは私のいない間に、大人しい鈴が強引に彼らに誘われたのかと、身構えると


「実は・・・。」


と鈴が経緯を話し始める。


「だから、ごめん。あとで返すから、取り敢えず、この方に600円をお返しして欲しいの。」


それを聞いた怜奈は、身体の力が抜けると共に、相変わらずの見かけによらない鈴のそそっかしさに、内心呆れるしかなかった。


「すみません、すっかりご迷惑をお掛けしてしまって。こちら、お返しいたします。」


頭を下げながら、600円を差し出した怜奈の横で、鈴もまた頭を下げる。


「そんなに恐縮しないでよ。さっきも言った通り、ご馳走したわけじゃないし。むしろ600円くらい、ポンと払えよって思ってるよね?」


「いえ、そんなこと全然ありません!助けていただいて、本当に感謝してるんです。」


その男の言葉に、慌ててブンブン首を振る鈴。


「そっか、じゃその600円はしまってよ。」


「えっ?」


「見たところ、高校生かな?2人は。」


「はい・・・。」


「僕の方が年上だからさ。そのくらいは出させてもらうよ。」


「でも・・・。」


「最初からそう言うと、かえって警戒されちゃうと思ったから。安心して、600円で、君達を釣り上げられると思うほど、セコくはないつもりだから。」


「なに、お前カッコつけてんだよ。」


「別にカッコなんかつけてねぇよ。」


隣の友達のツッコミを交わす、その人の笑顔は、とても暖かくて


「ありがとうございます。すみません、ご馳走になります。」


結局、鈴はそう言っていた。
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