片桐くんの愛は意外にも一途でした
「わ、悪かった。だから離れてくれ」


「わかったならいい」


私は、納得をしてくれた神楽から離れた。


どういうわけだか、神楽は動揺している。


「こういうこと、他の男子にはしないほうがいいぞ」


「神楽の言ってる意味がわからない。それに、私なんか誰も相手しない」


あの日以来、すっかり卑屈になってしまった私は自分に自信が持てなくなった。


そういう意味では、片桐くんが少し羨ましいのかもしれない。そのせいで片桐くんには、いつも喧嘩腰だ。


「俺は雨音のこと好きだぞ。だって、こんなにも、か、かわ……」


「ありがとう。そういって励ましてくれるのは、神楽だけ。……そろそろ午後の授業が始まる、行こう?」


神楽は、こんな私にも優しく接してくれる。


こんなにいい人なのに、どうして彼女がいないか不思議なくらい。


私は弁当箱をサッと片付け、メガネをかける。


そして、私は神楽に手を差し出す。


「俺は友達として言ってるわけじゃ……この距離は遠いな」


「?」


手を握り返してくれる神楽。


私には聞こえないくらい小さな声で、神楽は独り言を呟いていた。
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