片桐くんの愛は意外にも一途でした
「片桐さん」


「へ?」


急に苗字でよばれたからビックリ。


「片桐さんこそ声大きいよ。図書館では静かに、ね」


片桐くんの指が私の唇に触れた。


「しー」っと最後に注意を受けたが、私はそれどころじゃなかった。


男の子にこんなことされるなんて……。

片桐くんは何事もなかったかのように私から離れた。


「雨音。また肩に余計な力が入ってるよ」


ふぅーっと、耳元に息を吹きかけられた。


「んっ……」


「甘い声を出して誘ってるの?」


「さそってるってなにが?それよりも勉強おしえて。何度も言うようだけど、ここ図書館」


「雨音は基礎は完璧だからあとは自分との戦いだよ。それに勉強教えてあげたんだし、お礼がほしいな」


「自販機でジュースでも買ってくればいい?」


「彼女なんだから身体で払って?」


彼女のフリとはいえ、ここまでしないといけないの?


それに彼女じゃなくとも片桐くんの場合、女の子みんなに今の言葉を言ってそうで。私だけがいわれてるって特別感がない。


そもそも片桐くんに今までの彼女とは違うことをしてほしいなんて望んでるわけじゃ……。


まったくしてほしくないっていったらウソになる。けど、こんなのは私の単なるワガママ。
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