片桐くんの愛は意外にも一途でした
「私、わたしは……」


「……」


言葉の続きが言えなかった。


わたしはどうしたらいいんだろう?

どうしたいんだろう。


これから先、私は片桐くんとどうなりたいの?


「俺たちは大人になって変わった。お互い過去には触れない。それでいい?」


「……うん」


「このあとはプールもあるんだし。俺、雨音の水着見るの楽しみ。早くいこ?」


手を差し出してくれる片桐くん。私は伸ばされた手に触れた。


お互い過去には触れない。解決してるようでまったくしていない。

重く暗い空気からは脱したけれど、それは先送りとも、もしくは現実から目を背けたことにもなる。


本当は向き合いたかった。過去の片桐くんになにがあったのかわからないけど、私には知る権利があると思う。私がしりたいんだ。片桐くんのことを。


素直になれず、気持ちを伝えられない私は片桐くんの本当の彼女にはなれない。そもそも今の私が片桐くんの彼女になる資格はないから。


片桐くんは「彼女になるのに資格なんていらないよ」って優しい言葉をかけてくれるだろう。でも、それじゃあ私がイヤなんだ。


片桐くんの全てを受け止めたそのとき、私は片桐くんを守れる存在、本物の恋人として隣にいていい気がするから。
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