恋愛イデアル続編
夏への扉。
[梅雨寒に夏への扉]

長月遥は畳敷きのアパートの一室で梅雨の雨音を聴いていた。曇り空に鳥の鳴き声がした。

高い澄みきった鳥の音。部屋にある扇風機が梅雨寒の冷えた空気をかき回していた。

よせてはかえす。
よせてはかえす。

夏は黄金だった。彼女は「たんぽぽのお酒」というレイ·ブラッドベリのFT小説や、ロバート·A·ハインラインの「夏への扉」という古典的(クラシカル)なSF小説を思い出す···

この時期、長月遥は夏への扉を必要としていた。たとえばケットはどうだろう?
快活な妹、ケットであれば答えを諦めずに探すはずだ。幾重ある扉が夏へと通じることを信じて。
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