君は無垢なフリをして​───本当は野獣。
「あ…ほっぺが腫れてる!冷さないと!」


「花菜。」



氷を取りに行こうと立ち上がった私。


が、いつもよりも低い声で名前を呼ぶ中野 神弥に腕を引かれ、またしても私はソファーに腰を下ろした。



「逃げんな。」


「に、逃げてなんか、」


「逃げようとしてんだろ。」



私の目をジッと見る中野 神弥。


いつもと違うその表情に、ドキドキ、ドキドキ、心臓が煩い。



「…嫌なんだよ。」



視線を外し、ポソリと呟く。



「今まで傍に居たのに…俺だけ置いていかれるのは。」


「中野…神弥…?」



何か…いつもと違う…?



「だから、俺を一人にすんなよ…」



ゆっくりとした動作で私の首に腕をかけ、私の体を引き寄せる。


ぎゅ…っ


中野 神弥は子どもが甘えるように、私を抱き締めた。
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