ある冬の日の物語
アゲハも蝶子と同じくらい愛してしまった。
アゲハを好きになってしまった。
「あ」
「ん?どうした?」
「陽斗くん。見て」
アゲハが指さすのは桜の木。
まだ冬だから咲いていないが桜の枝の先には咲こうとしている蕾があった。
「もうすぐ春だから蕾がなってるな」
「桜?春?」
「え?だって春になれば桜が咲くだろ」
「…………」
「わからないのか?」
アゲハは頷いた。
少し不思議に思った。
桜を見たことないなんて。
「春になったらこの木に満開のピンクい花が咲くんだ。たくさんな」
「春っていつ?どれくらい経てば見られる?」
「そうだなあ〜あとひと月かな。卒業式が過ぎて高校受かった入学式には見られるんじゃないか?」