秘密で出産したら、溺れるほどの愛を注がれている。
保育園は家から近いため、徒歩で向かうが、職場はそうはいかず、定期券を握りしめて、地下鉄に乗る。

10時出勤のため、通勤ラッシュとは少しずれ、比較的快適な車内。

目的の地でおり、職場に向かうが、いるのは店長と主任だけ。

「おはようございます。本日もよろしくお願いします。」

一階で事務仕事をしている2人に挨拶をして、制服に着替えるために3階のバックに向かう。


私の仕事は、ブライダルジュエリーの販売員。

婚約指輪と結婚指輪を専門に取り扱っているセレクトショップで、4年働いている。

都会を離れてこっちに来てから、ありがたく雇ってくれて、子育て中は時短勤務などで迷惑をかけているかも知れないけど、周りのスタッフの温かさに救われている。

年中無休の店舗で、基本スタッフはみんな10時から19時勤務、なおかつ、休みは希望がない限りは平日だが、私は特例で時短勤務と土日祝休みにしてもらっている。
土曜日は、必要に応じて出勤することもあるが、基本は休みだ。

「あ、先輩!おはようございます!」
「佐伯さん、おはよう。」

佐伯美咲(さえきみさき)さん。私の2歳年下の後輩だ。
すごく懐いてくれていて、怜也も会った時には優しくかまってくれる。

「今日、平日なのに予約多いんですよ〜。あ、何件か先輩の戻りのお客さんもいましたよ」
「月曜日は新規が動く傾向にあるからね。戻ってきてくれるのありがたい。」

佐伯さんとそんな会話をしながら、着替えを終わらせる。

「じゃあ、また後で。」

着替えが終わって、店長と主任の事務仕事を手伝うべく、少し早めに一階に向かう。

「おはようございます。」
「おはよー。」
「おはようございます。」

緩めの返事で返してくれるのは店長。今年36歳の若めの店長だが、話術が桁違いでめちゃめちゃ売り上げを上げてるやり手だ。

主任は、28歳の女性で、こちらも、お客様からの信頼が厚いやりてスタッフである。

「メールとかって全部終わっちゃいましたか?」

見たところ、少しラフに座って話していたので、やることは終わってしまっていそうだった。

「うん。今日は数少なかったから。ありがとう。」
「そういえば、今日春原さん担当の予約2件も入ってるよ」
「あ、さっき佐伯さんから聞きました。戻りが多いって。」

一度来店してくれた時に接客を担当したお客様が、他店を見にいくなどの理由でその場では決めず、後日また来店することは、正直珍しいことではない。

ブライダルリングのセレクトショップは多いわけではないので、何も知らない人からしてみれば、何軒も回ってお気に入りのデザインを見つけようとするのだ。

「開店と同時に一件、そのあとは14時に一件ですね。新規着く暇ありませんね。」

予約表を見ながら苦笑い。

だいたい一件あたり、2〜3時間はかかるので、10時から17時までの勤務の私はいつも2件取るのがやっと。

「あとは、春原さん担当のお客様の受け取りが入ってて、指名入ってたから時間調整してもらってる。」
「あ、ほんとですか。ありがとうございます。」

お客様の時間を確認すると、13時半になっていたので、午後のお客様の前に対応することができる。

その後は、ちらほらとほかスタッフも出勤してきて、店内を掃除してお店を開ける。

「こんにちは。10時から予約してたんですけど。」

「いらっしゃいませ。こんにちは。先日はありがとうございました。別店舗さんいかれるとおっしゃてましたが、どうでした?」

予約のお客さんを出迎えて案内を始めていく。
一度接客について終えば時間が過ぎるのは一瞬で。

「それでは、綺麗にお作りさせていただきますので、よろしくお願いいたします。」

1組めのお客様が終わり、片付けてバックに戻ればもうすでに12時半。

「すみません。お先にお昼いただきます。」

午後の時間に間に合うようにお昼をいただく。
同じタイミングで、新卒の子も休憩のようだったので、少し話してみる。

「最近どう?なれてきた?」
「慣れてはきました。でも、覚えることが多くてパンクしそうです。」

そう、セレクトショップだから、ブランドも多ければリングも多い。
それぞれアフターサービスの内容も変わってくることもあるので、とにかく覚えることが多い仕事だ。

「私も1年目の時パンクしてた。なんかわからないことあったらなんでも聞いていいからね。」
「ありがとうございます。」

そう声をかけながら休憩時間を過ごし、午後の業務に戻る。

担当のお客様の受け取りを済ませ、予約の戻りのお客様の案内をする。

戻りのお客様は2人ともリングの購入をしてくれたため、成約率が変わっていく。

今日のお客さんたちのデータ処理をしていたら気づけば17時。

「春原さん、17時だよ。お迎え行かないと。」
「あ、すみません。お先に失礼します。ありがとうございました。」

スタッフにそう告げて、着替え終われば足早にお迎えに向かう。

他のお母さんたちもちらほらとお迎えに来ていて、同じクラスの子のお母さんもいる。

「春原さん、おかえりなさい。今怜也くん来ると思います。さっきそろそろお母さん来るかもって準備始めてたんですよ。」
「ありがとうございます。そうだったんですか!最近、なんとなく時計を見るようになったんですよ。」

先生から今日の怜也のようを聞きながら、来るのを待つ。
あまり時間はかからず、荷物をまとめた怜也が来た。

「ママ!おかえり!」

私を見つけた途端に笑顔で走り出す我が子が可愛い。

「ただいま。今日はどうだった?」
「今日はね、お外で遊んだの!」
「そっかあ、よかったね。楽しそうだね。」
「うん!」

朝のくずりは何処へやら。笑顔で今日あったことを報告してくれる。
楽しさ冷めやらぬ状態の怜也を少し落ち着かせて保育園を後にする。

「怜也、今日何食べたい!」
「んーとね、オムライス!」

帰り道で夜ご飯のリクエストを聞き、家にあったものを思い出す。
ここで家になければスーパーに寄って帰るし、あれば何も買わずにまっすぐ家に帰る。

オムライスの具材になりそうなものは家にあるので、今日はまっすぐ家に帰る。

「ただいま。」
「たーいま」

「手洗っておいで。」

家について、怜也が手を洗っているうちに、保育園バッグの中を片付ける。
お弁当や汚れた服を出して、空になったバックはいつもの定位置へ。

テレビをつけ、子ども向け番組をつけてから台所に向かう。

怜也がテレビに夢中になってくれている間にパパッとオムライスを作り、食卓に並べていく。

「よし、いただきます。」
「いたあきます」

お腹が空いていたのか、ハイスピードで食べ進めていく我が子を見守る。

基本的にこのあとは早い。
お風呂に入って寝る準備を済ませて、寝る。

夜はスッと寝てくれて、本当にありがたい。

私も、睡眠時間を削ってしまうと、体調を崩しやすくなるため、夜更かしはしない。

怜也が寝たのを確認して、洗い物と予洗いが必要な洗濯物を洗って、戸締りの確認をして布団に入る。

こんなに平和な毎日がこれからも続いていきますように。

「おやすみ、怜也」

< 2 / 2 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:5

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

公開作品はありません

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop