冷酷社長に甘さ優しさ糖分を。【完】
しかし――
「こんな時に言うのもアレだが…」
突然。
まるで思い出したかのように
イトカを見下ろしながら
少し照れながら社長は言う。
「結婚するか」
…と。
「・・・え?」
これからする行為と
思い掛けない言葉のWパンチで
イトカは硬直。
「確か俺はまだ
その言葉を言ってなかっただろ?」
「そう…ですけど…
それ、今言います?」
「思ったんだから仕方ないだろ」
『シバ社長はやっぱりこういう男だな』と
呆れながらも
その気持ちに素直に喜ぶイトカ。
「んもう…
本当、貴方らしい。
ですが嬉しいです。
シバ社長の妻になれるなら
何より幸せです」
イトカもまた
照れて顔を赤くしながら応えるが
社長には曖昧に聞こえたらしく…
「それはつまりどういう事だ。
いいのか悪いのかハッキリ答えろ」
冗談抜きで
真顔で問う社長。
ムードも何もない。
「いや、この状況なら
普通OKだってわかりますよね。
どうしてそんなに鈍感で空気が読めないんですか」
まさかこんな甘い状況で
真顔で言われるとは思いもせず
”吐息”ではなく”溜め息”しか出て来ない。