ずっと一緒に 〜後輩男子の奮闘記〜
「やっぱり、千波ちゃん、須藤君には随分気を許してるんだね」
家を出てすぐに、課長が笑いながら言う。
「え……どうしてですか?」
「千波ちゃん、他人がいるとなかなか寝られないんだって。家族でもそうみたいで、旅行は常に寝不足って言ってた」
「は……」
さっき、すーって寝てたのに。気持ち良さそうに。
「家に泊まっても、さっきみたいに寝ちゃうことなんてなかったんだよ。ちゃんと自分で戸を閉めて、自分で布団に入って、俺達が寝室に引き上げないと眠れないらしかったんだ。それが、ソファーでうたた寝して、起こされても起きないなんて、って恭子がびっくりしてたよ」
さっきの、千波さんと俺を見比べてたのはそういうことか。
「試しに、須藤君に任せてみたら、そのまま寝たって言うし」
「……あれって、普通じゃないんですか?」
「千波ちゃんにとってはね、かなりレアなことのはずだよ」
筒井課長はにこにこしている。
「伝えてみたら?」
思わず、足が止まる。
「須藤君が考えてるより、いい結果になると思うけど、僕は」
筒井課長のにこにこに、筒井さんのニヤニヤが重なって見える。
さっき見た、千波さんの寝顔。
無防備で、子どもみたいで、可愛い。
ずっと、毎日見ていたい。
信じてみて、いいんだろうか。
他の人より、近くにいるって。
安心してもらえてるって。
だからって、好きになってもらえるとは限らないけど。
踏み出してみようか。
筒井課長のにこにこと、筒井さんのニヤニヤに、少し勇気をもらえた気がした。