ずっと一緒に 〜後輩男子の奮闘記〜


 その日は、小田島さんに誘われて、昼は定食屋さんに出かけた。久保田君も一緒に。
「久保田は、連休中は何してた?」
 俺も、去年同じことを聞かれたな、と思った。
「友達と遊んでました。大学とか、高校の友達とも久しぶりに会いました」
「聞いたか須藤、これが普通の若者の答えだぞ」
 小田島さんはニヤニヤしている。
「小田島さん、人の事言えませんよね」
「俺は実家で甥っ子姪っ子と楽しく遊んだぞ」
「俺も一応友達と会いました。大学の時の」
「なんだ、須藤も友達いたのかよ」
「います。……少ないけど」
 久しぶりに大学の時の友達とは会った。男3人で、飲んでしゃべって。
 俺は楽しかったけど、確かに地味ではある。
「須藤さん、出かけたりはしなかったんですか?」
 俺は頷いた。
「人混み苦手だから」
「ずっと家にいたんですか?何してたんですか?」
「本読んだり、勉強したりかな。後は寝てた」
 ゴロゴロしながら、千波さんから時々届くケンさんの写真とメッセージを何回も見ていた。
「デートはしなかったんですか?」
 ポロッと、箸が手から滑り落ちた。落ちた先は定食の盆の中で、慌てて持ち直す。
 久保田君は、特に何も思わずに聞いてきたようだ。
「デー……ト、って……」
「あ、そうか、本田さんは帰省したって言ってましたね」
 俺は、隣に座る後輩の顔を凝視した。
 久保田君は見ている俺に気付くと、驚いている。
「な、なんですか?なにか変なこと言いましたか?」
 こっちがなんですか、だ。変なことっていうか、なに言われてるかよくわかんないんだけど。
 小田島さんが、ぷっと吹き出した。
「久保田、須藤と本田は付き合ってないぞ」
「えっ⁈」
「はっ⁈」
 久保田君と俺の声が被る。
「な、小田島さん、何言って」
「えっ付き合ってないってマジですか?」
「そう」
「ほんとですか?」
 久保田君が、俺に向かって聞く。
 どうしてそんな話になるんだよ。
 俺は頷いた。確かに、付き合ってない。
「だってあんなにいい雰囲気で、お互いに大好きオーラ丸出しじゃないですか。いつも一緒に帰ってるって話だし、付き合ってるもんだと思ってました」
 いい雰囲気?お互いに?
「俺の同期でも、須藤さんいいって言ってる子いたし、本田さんいいって言ってるヤツもいましたけど、2人でいるところ見たらいい雰囲気過ぎて、みんな無理だってあきらめてたんですよ」
 え、千波さんに目を付けたヤツがいるのか?
「さっきだって、本田さんは俺と須藤さんへの態度がぜんっぜん違うんですもん。あれで付き合ってないってどういうことですか?」
 どういうことって……言われても。
「俺も聞きたいなあ、須藤くん」
 小田島さんがニヤニヤしながら言う。俺に、くん、なんて付けたことないくせに。
「……どう、にも、なってない、から……」
 小田島さんがゲラゲラと笑い始めた。
 久保田君は、はあっとため息をついた。
「須藤さん、早くしないとやばいんじゃないですか?本田さん可愛いし、年上だけど、さっき言ってた僕の同期も全然アリって言ってたし、僕もアリですからね」
「えっ⁈」
「須藤さんがいなかったら、もういってますよ」
 絶句した。なんだそれ。
「へえ、久保田は本田アリなんだ」
 小田島さん、そういうことをサラッと言わないでください。
「アリですよ。今まで周りにいなかったんですよね。僕の顔を見ないでああいう風に避ける人。だから気になっちゃうんです」
 なんだって⁈
「ああいう風にって?」
 だから小田島さん、サラッと聞くのやめてください。
「僕、自慢じゃないですけど、女性に好かれるんですよ。大体避けられる時って、相手が僕のこと好きで、恥ずかしがって避けるパターンなんですけど、本田さんはそうじゃなくて、壁があるっていうか、嫌われてはないみたいなのに、距離を置かれるし、僕には全く興味ないみたいだし」
 一体なんなんだコイツは。自信たっぷりじゃないか。


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