転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました
以前レヴが通話できる土人形を作ってくれたのを見て、その応用で文字のやりとりが出来ないかサマラが提案したところ、彼は見事期待に応えてくれたのだ。
なんでもレヴは土魔法が特に得意らしい。やろうと思えばひと晩で山や洞窟ぐらい作れるのだとか。

『お父様ならお昼から王宮に行く予定だから大丈夫。湖で待ってるね』

サマラが手早く文字を刻むと、ややして『わかった』と返事が来た。それを確認してサマラは粘土板をノートの下に隠し、何事もなかったように実験の記録を続ける。
周囲をそっと窺ってみたが、サマラとレヴが密かにやりとりをしていることに誰も気づいていないようだ。

(レヴが便利なものを作ってくれてよかった。……それにしても、こんなに近くにいるのに会話もままならないなんて)

やっかいなことになったもんだと、サマラはため息をつく。
これもまたディーの娘を思う愛情のうちだと思えば、腹は立たないけれども。



「で、所長は相変わらずイラついてんのか?」

「うん。昨日なんか晩ご飯もとらなかったよ。部屋にこもりっきり」

昼休憩。
サマラは湖のほとりにある木陰に座り、バスケットから出したサンドイッチにパクつきながら答える。ターキーとベーコンとサラダのサンドイッチ。家事妖精が作ってくれるお弁当はいつも絶品だ。

「神殿の方とは話がついたんだろ? あのいけ好かない神官が書面とはいえ謝ったのに、まだ気が済んでないのかよ」

サマラの隣に寝そべりながら、レヴは林檎を齧る。彼は昔から肉や卵、パンなど加工したものを口にしない。食べるのは果物か木の実だけだ。

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