転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました
すると、伸ばした手をレヴがふいに掴んできた。体を起こしながらレヴはようやくサマラに顔を向ける。琥珀色の瞳に見据えられ、サマラの胸がドキリと高鳴った。

「……レヴ……?」

「なあ、サマラ。俺たち、このままどこか遠くへ――」

真剣な表情でレヴが何かを伝えようとする。けれど、その言葉は突然の強風によって遮られた。

「きゃあっ!」

ゴォッと唸り声を上げて、風がバスケットや水筒を巻き込んで渦巻き吹き上がる。思わず瞑った目を恐る恐る開けば、レヴの向こうに人影が見えた。

「何をしている」

黒い外套をちぎれそうなほど風になびかせながら、その人影は威圧的な声で聞いてきた。
サマラは顔をサッと青ざめさせる。こんなに――こんなにディーを恐ろしいと思ったことは、一度もない。

「お……お父様……、どうしてここに……」

ディーは凍てつくような冷たい眼差しで、ゆっくりこちらに近づいてくる。その視線の先はサマラではなくレヴだ。
レヴは唇を噛みしめながらディーを睨みつけている。サマラの手を掴んだ手は、離されていない。

そのとき、握り合っていた手が突然弾かれた。小さな雷が落ちたみたいだ。
サマラの手は少し痺れたくらいだが、レヴの手からは細く煙の筋が立っている。

「っ! お父様、どうして……!」

さすがに食って掛かろうとサマラは立ち上がろうとしたが、それより先に目の前までやって来たディーがレヴの胸ぐらを掴んで体を持ち上げた。

「サマラに近づくなと警告したはずだ。何故言うことを聞けない」

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